キュンキュンと、ディフェンスに触れさせることすら許さない#24・CB北詰明未(きたづめ・あすみ)選手のキレのあるカットイン。その裏には、独自の「感覚」と「思考」があった―。

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―北詰選手は加入当初はレフトバック(LB)で、そこからセンター(CB)に転向されたんですよね
北詰:ブレイヴキングス刈谷に入って2年くらいはLBで出させてもらっていました。でも、日本代表ではセンターを任されることが多かったので、ブレイヴキングス刈谷でもセンターをやりたいと監督に伝えました。
中学高校時代はずっとCBをやっていたんですよ。大学では3年生まではLBで、4年生の時にCBの先輩が引退されて、そこから僕がCBを任されるようになりました。
―ハンドボールは中学から始めたのですか
北詰:そうです。小学校まではミニバスのチームに入っていました。中学でもバスケを続けようと思っていたのですが、バスケ部に仮入部したときに筋トレばかりで全くシュートを打たせてもらえなくて……。楽しくないなと思って、ハンドボール部に行ってみたら、「どんどんシュート打っていいよ」と、その時は先生も優しかったんですよね。でも、いざ入部したら、豹変して(笑)、バスケ部より厳しかった。だまされるようにハンドボールを始めたのですが、今は続けてきて本当に良かったと思っています。
―LBとCBでは役割が異なります。転向する際、どのような難しさがありましたか
北詰:CBは攻撃をコントロールするポジションでもあるのですが、最初は1人でガツガツやろうとしすぎて上手くいかないことが多くありました。CBはこうあるべきだという正解があるわけではないのですが、自分は1対1や得点力に自信を持っているし、目の前に人がいたら抜こうとするタイプ。ある意味で、1対1が癖付いてしまっているので、自分の得点力を生かしながらも周りを生かす、そのバランスを取るのが最初は難しかったですね。
―その課題をどのように克服していったのですか
北詰:海外選手の映像を中心に、本当にたくさんの映像を見ました。
―国内ではなく、海外ですか?
北詰:僕は世界基準のプレーを意識しているので、世界ではどういうトレンドなのか学ぶことを常に意識しています。日本代表として、世界で戦うためにはどうすればいいのかということも常に考えています。
試合中も、ずっと頭をフル回転させているので、身体より脳みそが疲れます。

―CBとしてのご自身のプレーに手応えを感じられるようになったのは、いつ頃からですか
北詰:僕のスタイルができたなと思えたのは、本当に最近です。ヘッドコーチがラース(・ウェルダー)に替わったことがきっかけでした。
ラースは本当にポジティブで、「自分を信じろ」という言葉をいつも掛けてくれます。彼の信頼に応えようと頑張ったことで殻を破れた部分もありますし、戦術的にもCB専用のフォーメーションが増えたので、気持ちよく1対1を仕掛けられるということもあります。

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―1対1は北詰選手の代名詞でもありますし、ブレイヴキングス刈谷の大きな武器でもあります
北詰:1対1に関しては、日本でトップ3に入るという自負を持っています。
―ちなみに、あとお二人は?
北詰:藤坂尚輝選手(大同特殊鋼 Phenix TOKAI)と安平光佑選手(ブルガンSC/クウェート)もうまいですよね。
―でも、藤坂選手も安平選手も小柄な選手ですね
北詰:身長があって動ける選手は、僕だけです。あっ、(吉野)樹さんもうまいですね。
―言葉で表現するのは難しいですが、吉野選手とは抜き方のスタイルが違う感じがします。北詰選手はスピードだけではなく、「キュンキュン」と切れ味鋭く抜いていく印象がある。カットインのコツのようなものはあるのですか
北詰:言葉にするのは難しいのですが、『いいタイミングで1対1に入れば、絶対に抜けるな』という感覚があるんですよね。
ディフェンスの身体の向きなのか、重心なのか、僕自身もどこを見ているのかわからないのですが、『この人はこっちを守りたいのかな』という雰囲気があるので、その逆をつくイメージですね。
―雰囲気……ですか
北詰:それが上手くいくと、キュンキュンとディフェンスに触れられずに抜けるんです。
―その感覚が外れた時は、強引に力で抜きますか
北詰:僕は、無理はしないです。なるべくボールを失わないように、フリースローでもう一度仕切り直します。ディフェンスを引きずって、ゴリゴリっといく人もいるんですけど、僕はボールを失わないことを優先します。

―なるほど。状況判断やシュートセレクションがいいので、シュート確率が高くなるんですね(※編注)
北詰:若い時は多少強引にでも抜いてやろうという気持ちがありましたが、そこでミスをして試合の流れが変わってしまうリスクもある。今はギャンブル的なプレーはしないように意識しています。
ただ、ミスを怖がりすぎてチャレンジができなくなるのもよくない。時には「自分がガンガン行ってやろう」という気持ちを出してもいいかなとも思っています。
―ディフェンスも北詰選手がカットインしてくるだろうとわかって守っている。にもかかわらず、そこを抜いて得点できるのは唯一無二の武器だなと思います
北詰:僕のカットインもそうですけど、ラースのハンドボールも研究されてきているので、「次」を考えなければいけない。ラースの求めるハンドボール以上のものを見つけて、それを試合で出していかなければ、優勝はできないと思っています。
そういう部分で、1対1は僕の武器ではあるのですが、それにこだわりすぎず、次の武器を鍛えていかなければと取り組んでいるところです。
―今のお話にも繋がるのですが、後半戦に向けて、中断期間に取り組んだことを教えてください
北詰:前半戦は新しく加入した選手とのタイミングが合わず、自分たちのリズムを失っていた部分がありました。中断期間でコンビネーションを高めながら、今まで積み上げてきた戦術をもう一度基本から見直して、質を高めてきました。全員がパワーアップできた、手応えのある中断期間を過ごせました。
―ファンの方へ、後半戦の意気込みをお願いします
北詰:いつも応援ありがとうございます。昨年の日本選手権では僕たちも本当に悔しい思いをしましたし、ファンの皆さんにも残念な思いをさせてしまいました。その悔しい気持ちを忘れず、後半戦はプレーオフで優勝できるように頑張りますので、引き続き熱い応援をよろしくお願いします。
取材・文/山田智子

(※編注)北詰選手の今季のシュート成功率は77.8%(26年2月12日現在)。60%がバックプレーヤーの基準と言われる中、かなりの高確率です。
2026/02/12
