FOCUS ON BRAVEKINGS

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【2025-26 #3】アンドレ・ゴメス選手インタビュー 来日した意外な理由とは

「ヨーロッパと日本の良さを組み合わせた新しいハンドボールを生み出したい」 

 

 

 今シーズンよりブレイヴキングス刈谷に加入したLBアンドレ・ゴメス選手。豪快なシュートと広い視野を活かしたパスでオフェンスを牽引する元ポルトガル代表は、なぜ日本で、ブレイヴキングス刈谷でプレーをすることを選んだのか。ブレイヴキングス刈谷でどんなことを成し遂げたいのか。その胸の内に迫りました。(取材・文/山田智子)※公式YouTubeでもインタビュー配信中!

 

 

 

―刈谷での生活には慣れましたか

 

ゴメス:今、ここにいることがすごく幸せで、自分たちの決断にとても満足しています。チームメイト、コーチなど、このクラブに関わるすべての人が私たちをサポートし、プレーをするのに快適なプロフェッショナルな環境を整えてくれています。今のところ、プラスしかないですし、そのことが私のモチベーションを高めてくれます。

 

―ゴメス選手はこれまでヨーロッパを中心に強豪チームで活躍してきました。日本でプレーすることを選んだ理由を聞かせてください

 

ゴメス:私自身も家族も以前から日本の文化に興味があり、リーグHに挑戦したいという意志を持っていました。FCポルト時代にラースヘッドコーチ(HC)に指導をうけていたことも、ブレイヴキングス刈谷へ移籍する後押しになりました。

 

―日本のどんなところに興味を持っていたのですか

 

ゴメス:私は日本の歴史にとても興味を持っていました。また、妻は子どもの頃からずっと空手をしていて、ポルトガルチャンピオンになったこともあるんです。私たちはアジアが好きで、休暇を過ごしたこともあり、アジアには運命的なものを感じていました。日本では富士山、奈良、岐阜の馬籠宿に行ったことがあり、今度京都に行く予定です。日本食も好きで、一番好きなのはお寿司です。

 

 美食、日本の歴史、妻のキャリアなどトータルで考えて、日本でプレーすることは私たち家族が成長するためにとても良いことだと考えました。

 

 

 

 

―ゴメス選手は、ポルトガルが五輪初出場した東京オリンピック2020で日本と対戦したことがあります。日本のハンドボールについてはどのような印象を持っていましたか

 

ゴメス:東京2020でも対戦していますが、20歳くらいの時にユース世界選手権でも日本と対戦しました。ここに来る前からわかっていたことですが、日本のハンドボールはヨーロッパとは違って、非常に組織的で、戦術的なスタイルです。そして、日本人選手は非常にスピードがあって、ポテンシャルを持った選手が多い。整った環境で、優れたコーチの指導を受ければ、日本代表チームと日本のハンドボールは大きく成長できると思います。ここに来て、日本人選手を間近に見て、その考えは確信へと変わりました。

 

―ゴメス選手のようなワールドクラスの選手がリーグHでプレーすること自体が、日本のハンドボールのレベルを押し上げることに貢献していると思います。ラースHCからはどのようなことを求められていますか

 

ゴメス:基本的にラースHCは自由にプレーさせてくれています。彼は私のこれまでのキャリアや得意なことを知っていますし、私自身も自分の強みを発揮することが他の選手に良い影響を与えられることを分かっています。私の強みは、パワー、ジャンプ、シュート力、1対1での突破力、そして試合の流れを読んで、周りの選手のアシストをすること。自分の強みを発揮して、チームに貢献したいです。

 

 コーチに自分がやってきたことを肯定してもらえるのは、自分がプレーする上での大きな自信になります。私はこれまでさまざまなコーチのもとでプレーしてきましたが、ラースHCのスタイルは非常にシンプルで、私はそれがとても好きです。

 

 もちろん細かいところ、たとえばディフェンス時の動きや速攻時の走り方、オフボールの動きなどはチームにアジャストすることを求められています。しっかりとコミュニケーションをとって、良い関係を築いていきたいです。

 

 

 

―ここまでの戦いを見ていると、ゴメス選手が他の選手にとても良い影響を与えているのを感じます

 

ゴメス:昨シーズンのプレーオフの試合の映像は見たのですが、正直なところ、これまでとの変化について私には分かりません。でも、ここに来てから感じるのは、このチームの選手が心から目標を達成したい、もっと成長したいと望んでいることです。

 

 もしチームが変化しているのであれば、とても嬉しいことです。先ほどもお話ししたように、私は単にプレーヤーとしてここでプレーをするだけでなく、チームを助けるためにここに来たからです。

 

 私から伺いたいのですが、チームにどのような変化を感じていますか。

 

―あくまで私の印象ですが、例えば得点が止まったり、接戦になったりした状況でも、昨シーズンよりも落ち着いてプレーをしているように感じます。おそらく、決定力の高いゴメス選手が加わったことによって、『自分が点を取らなければ』というプレッシャーが軽減されて、のびのびとプレーできているからではないかと考えています

 

ゴメス:スポーツにも人生にもストレスがかかる瞬間があります。その時にバランスを取れる誰かがいることが大きな助けになります。試合の中には良い局面も悪い局面もありますが、興奮しすぎず、ストレスを感じすぎず、これから起こることを恐れすぎず、常に心を一定の状態に保つことが非常に重要だと考えています。

 

 私はこれまでに多くのリーグやチームでプレーし、厳しい試合や、チャンピオンズリーグ、ワールドカップなどのビッグゲームを経験してきました。その中で、試合の重要な瞬間に心を平常心でいる術を養ってきました。チームにはメンタルコーチもいますが、私はコート上でこのことをチームメイトに伝えることができると思っています。

 

―日本に来て対戦した中で、印象に残っている選手はいますか?

 

ゴメス:特定の選手はいないのですが、若い選手に非常にポテンシャルが高い選手がいるなと感じています。

 

 ポルトで2年間一緒にプレーした豊田合成ブルーファルコン名古屋のヨアン・バラスケス選手とまた対戦できたのもうれしいです。豊田合成はとても良いチーム。両チームの対戦はプレーをする選手にとっても、観客にとっても、常に面白い試合になることでしょう。

 

(8月のプレシーズンマッチで豊田合成バラスケスと話す)

 

 

 

―ゴメス選手のこれまでのキャリアについても聞かせてください。ハンドボールとはどのように出会ったのですか

 

ゴメス:10歳くらいの時に、母の勧めで始めました。母は、子どもは時間に余裕があると、時に道を踏み外すことがあるので、スポーツを始めるのが良いのではと考えていたようです。いとこがハンドボールをしていたので、そのつながりで私もハンドボールを始めました。実を言うと、それまではスポーツ観戦全般が全く好きではありませんでした。ハンドボールも始めてすぐに一度やめたのです。でもコーチが「お前には可能性がある」と引き戻してくれて、再び始めて、今に至ります。

 

―ハンドボールを続けるモチベーションになったものは何ですか

 

ゴメス:コーチが自分に自信を与えてくれて、自分が上達していくことがすごく楽しかったんです。それが今も続いています。今ではハンドボールがない状況は考えられません。

 

―これまでにさまざまなチームでキャリアを重ねてきましたが、印象に残っている試合はありますか

 

ゴメス:ちょうど先日、妻と同じ話をしていました。良い瞬間も悪い瞬間も覚えていますが、その中でもポルトに在籍していた時にチャンピオンズリーグで準々決勝まで進んで、デンマークのオルボルと対戦した時や、ポルトガルの伝統の一戦と言われるポルトvsベンフィカ、ポルトvsスポルティングはいい思い出として残っています。

 

 オリンピックも忘れられない瞬間ですね。世界最高峰の選手と競える、トップアスリートにとっては特別な舞台ですから。残念ながら、東京オリンピックは新型コロナウイルスの時期で無観客でしたが、それでも試合はもちろんオリンピック村など、すべてがとても印象に残っています。

 

―あらためて今シーズン、ブレイヴキングス刈谷で成し遂げたいことを聞かせてください

 

ゴメス:レギュラーシーズンで勝ち、プレーオフで勝つことです。ブレイヴキングス刈谷はコーチがデンマーク人で、3人の外国人選手がいます。ヨーロッパの良さと日本の良さを組み合わせて、今までにない素晴らしいハンドボールを生み出していきたいと考えています。

 

 ブレイヴキングス刈谷のホームアリーナにはヨーロッパにも負けない素晴らしい雰囲気があります。ホームでもアウェーでも、ファンの皆さんのサポートには感謝しています。

 

 シーズンが終わる時に、皆さんと一緒に喜び、感動を共有できればうれしいです。ありがとうございます。

 

(お祭りうちわを持って歓声に応える)

2025/11/17