FOCUS ON BRAVEKINGS

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【2025-26 #8】祝! プレーオフ優勝記念座談会

(左から櫻井、松下、渡部、杉岡、富永)

 

 

 リーグH 2025-26 プレーオフ・ファイナル。ブレイヴキングス刈谷は宿敵・豊田合成ブルーファルコン名古屋との死闘を制し、7年ぶりの日本一に輝きました。5年間阻まれ続けた壁を、いかにして打ち破ったのか。興奮冷めやらぬ中、渡部仁キャプテン、杉岡尚樹選手、松下海選手、櫻井睦哉選手、富永聖也選手の5人が、激闘の舞台裏を振り返りました。

(取材・文/山田智子)

 

 

―プレーオフ優勝おめでとうございます

 

全員:ありがとうございます。

 

―まずは、今のお気持ちを聞かせてください

 

櫻井:素直に嬉しいです。自分は入社してからずっとプレーオフの決勝まで行くことができていたんですけど、毎年そこで敗れていたので、今年こそはと、いつも以上に熱が入っていました。会社の人も今年こそは優勝できるんじゃないかという期待が大きかったので、それに応えられてホッとしている気持ちもあります。

 

富永:まだあんまり実感が湧いていないですね。色々な人から「感動したよ」とかたくさん言葉をかけてもらって嬉しかったんですけど、優勝したのが初めてなので、感覚がわからないんですよ。

 僕は大学生の時にスタッフとしてプレーオフのお手伝いをしたことがあるんですけど、その時にトヨタ車体の初優勝を目の前で見ました。その何年後かに、僕がそのチームの一員として優勝できるなんて、とてもうれしいです。

 

松下:(大阪体育大学の)大先輩である高智海吏さんを優勝で送り出すことができましたし、(渡部)仁さんがキャプテンをしている時は負けていないということを崩さずにすんで、素直にすごく嬉しいです。

 これまでは1点差で負ける展開が多かったので、気持ちだけは絶対に負けないと決めて、みんな挑んだと思うので、それが結果として表れてよかったです。

 

杉岡:5連覇をしている豊田合成に1点差で勝つことができて。ブザーが鳴った時は本当に信じられなくて、夢じゃないかと思いました。終わった後ははしゃいでたんですけど、『これ、ほんまかな』と気持ちはふわふわしていました。優勝セレモニーの後に、ファンの方たちのうれしそうな顔を見て、みんなハッピーな気持ちになって。刈谷に帰ってきて、会社の人やスポンサーの方と話をさせてもらって、本当にみんなが心の底から待ち望んでくれていた優勝を自分たちがやり遂げたんだなと、ようやく実感が湧いてきました。それと同時にホッとして、今も体の力が抜けたままです。

 

渡部:一言で言えば、達成感を感じています。この1年間は、帆山(彦沢)S&Cコーチが来て、それぞれの選手がもう一歩自分をレベルアップさせるために考えて、彼に(フィジカルトレーニングの)メニューを考えてもらって、成長してきました。ここにいるメンバーで言えば、松下、杉岡、櫻井は、練習で色々なシュートを打ってきたし、富永もさまざまなディフェンスのドリルに取り組んできました。それがプレーオフの舞台で発揮されて、結果に結びついたことは、それぞれの自信につながったと思います。

 北詰(明未)より下の世代は優勝経験がなかったので、彼らがプレーオフ優勝を経験し、レギュラーシーズンでも豊田合成を倒したことも自信になったと思いますし、それを来シーズンの成長につなげていきたいです。

 

 

 

―プレーオフについて、順を追って振り返っていきたいと思います。セミファイナルのレッドトルネード佐賀戦はスムーズな入りだったように感じました

 

杉岡:プレーオフの前に選手全員でミーティングをしたんですよ。プレーオフとリーグ戦は何が違うのか、みんなで意見を出し合い、どんなことが想定されるのか、それに向けてどう準備するのか、プレーオフの挑み方を全員で共有しました。

 今年は佐賀に負けていないですけど、プレーオフは雰囲気も違いますし、一発勝負なので相手も全力で挑んできます。プレーオフに対する心構えを全員で準備できていたのが、試合の入りに影響したのかなと感じています。

 

富永:メンバー交代で入ったアンドレ(ゴメス)とパウエル(パチコフスキー)が珍しく緊張していましたね(笑)。

 

杉岡:ちょっと硬かったですね。一番場数踏んでいる2人が緊張していました(笑)。

 

渡部:2人とも初めてのプレーオフだったので……。

 

杉岡:パウエルは2年目なんですけど、去年のプレーオフは怪我で出ていない。トリム(ジョンセン)だけが楽しんでいましたね。

 

富永:トリムはスタートから出ていたのも大きかったと思います。セカンドメンバーはスタートのメンバーの良い流れを止めないように、流れが悪かったらいかに変えるかという難しさがあるので、去年までセカンドだった僕は、彼らの緊張にすごく共感します。

 

―セミファイナルは、後半の立ち上がりに一気に突き放し、36-30で勝利して、先にファイナル進出を決めました。

対戦相手が決まるセミファイナルの第2戦、豊田合成ブルーファルコン名古屋とジークスター東京の試合は最後までどちらに転ぶかわからない大接戦になりました

 

櫻井:第2戦は、食事をしながらみんなで見ていました。僕は、リーグ戦の相性的にはジークに勝ってほしかったんですけど、でもやっぱり自分たちが1年間積み上げてきたものを豊田合成にぶつけたいという気持ちもありました。

 

富永:みんなはジークに勝ってほしいと言っていたんですけど、僕は『合成、来い』と心の中で思っていました。これまでに3回優勝する夢を見たことがあるんですけど、全部対戦相手が合成だったんですよ。夢を口にしたら正夢にならないジンクスがあるので、誰にも言わないようにしていたんですけど、合成が来たので、優勝する自信はありました。

 

松下:これまでの相性としてはジークの方が良いですが、リーグ戦でも合成に勝っていたので、その時点で既に風向きは変わっているなと感じていました。合成に勝って優勝した方が“完全勝利”というか、自分たちの自信にもなるなと思っていました。

 

杉岡:僕は絶対に合成が決勝に来ると思っていました。決勝で負け続けてきた悔しい思いは、合成に勝ってこそ晴らせるし、自分たちの成長を示すこともできる。合成に勝って、優勝することができて、今までの負けが良かったと思えた。僕は心の底から合成をリスペクトしているんですよ。だからこそ、そこに勝ったことで、優勝の価値がさらに上がったんじゃないかと感じています。

 

渡部:僕も同じですね。ただ、ジークが上がってきたとしても、相当タフな試合になったと思います。ジークはクォーターファイナルからなので疲労はあると思うんですけど、僕らが(前回)優勝した時も3連戦で勝ったので。短期決戦は、勢いが相当試合に影響するんですよね。

 

 

 

―豊田合成とのファイナルはどのようなゲームプランで臨んだのですか

 

渡部:(ヨアン)バラスケスをどう止めるかという部分は、試合前のミーティングでも挙がりました。今までだったらその選手を極端に徹底マークする形だったのが、今はアイク(富永)が前に出る変形ディフェンスなので、櫻井がスペースを広く守っているんですけど、完全にバラスケスを抑え込んでいたので、彼の成長を感じました。

 

櫻井:合成のエースのヨアンは“大砲”というか、得点源になっている選手なので、今までだったら思い切りぶち当たることだけを考えて、ちょっと位置を高く取りすぎて、周りとの連携を崩してしまったことがありました。今は5-1ディフェンス(1人が前に浮いたシステム)をベースにしているので、システムを崩しすぎず、相手が本当に攻めてくるなと感じた時だけぶっ倒しにいくというメンタリティでいます。5-1ディフェンスで隣に富永がいて、その下には髙野(颯太)がいて。アウトを抜かれても(渡部)仁さんが必ずフォローをしてくれる安心感があったから、思い切りできたというのはあります。

 

―富永選手は今シーズン、リーグ全体のベストディフェンダー賞を受賞しました。シーズンの途中で、富永選手をトップに置く5-1ディフェンスに変えた部分も転機になったのではないですか

 

富永:昨年12月の日本選手権に(準決勝で)負けたことが悔しすぎて、今年のお正月は帰らないとお母さんに伝えて、年末も28日までずっと帆山さんと一緒にトレーニングをしてたんですよ。そこで「ここからお前は頑張らないといけない」「絶対優勝するんで、お願いします」というような話をしました。

 それで、年が明けたら、ラース(・ウェルダーHC)が、「ここからの半年は5-1でいく」と言い始めて。『えっ? ずっと6-0で守ってきたのに、いきなり5-1?』ってなったんですけど、髙野と僕に任せると言ってくれたので、何回も喧嘩をしながらも、作って、壊して、作って、壊して、お互いの意見をぶつけ合いながら、今のディフェンスを作り上げてきました。それがあったので、試合で相手がサプライズ的なことをしてきても、2人でその都度話し合って解決できるようになりました。

 

杉岡:僕は、(前後半)60分間ディフェンスの強度が落ちなかったことが、決勝の勝因だと考えています。彼らもリーグ戦で僕らの5-1ディフェンスを見ているので、対策をしてきたはずなんですけど、僕らの運動量や、先ほど櫻井が言ったような“殺してやる”みたいな強い気持ちが60分間切れなかった。キーパーに聞くと、ディフェンスが良くて、止められる可能性のあるシュートがいっぱい飛んできたと2人とも言っていました。

 一方で、オフェンスの部分は、ちょっとらしくなかったんじゃないかなと思っています。

 

―前半は4点リードする場面もありましたが、オフェンスでのミスがあって追い上げられました

 

杉岡:試合後にスタッツを見てびっくりしたのですが、シュート本数が10本も合成より下回っていたんですよ。つまり、シュートに行けないまま攻撃が終わった回数が多かった。オフェンスでミスをして相手に速攻で簡単に点を取られる。前半の追いつかれた場面、後半の2点差をつけて追いつかれた場面では、この5年間の負けパターンが完全に再現されているなと。

 

富永:よぎりましたね。

 

―同点に追いつかれて迎えたハーフタイムにはどんな話をしましたか

 

松下:「ディフェンスで我慢しよう」「オフェンスはミスだけだから」「0-0からもう一回だよ」と。今までのリーグ戦では、特定の誰かが喋ることが多かったんですけど、決勝に関しては、みんなが口々にチームのために声をかけていて、いい意味でロッカールームが騒がしかったです。僕は前半出場機会がなかったので、冷静に見られる部分があったのですが、大一番でみんなが真価を発揮した瞬間だったのかなと感じました。

 

 

 

 

―後半は最大2点差以内の大接戦のまま終盤を迎えました。26-26で迎えた残り2分。非常にプレッシャーのかかる場面で、松下選手が7mスローを決めて、前に出ました

 

松下:(吉野)樹さんが外したら、次は僕か杉岡さんが打つことが多いので、気持ちはつくっていました。杉岡さんも足が攣っていて、ラースは「吉野、吉野」と樹さんに打たせようとしていたんですけど、樹さんも足が攣っていて。(チームディレクターの)門山(哲也)さんから「行けるか」と聞かれて、「行きます」と答えました。

 戸井(凱音)選手が合成のファンをめっちゃ煽っていて、逆に僕はシーンとしている方が打ちづらいなと思っていたので、気が紛れてよかったなと。練習で打つ時と変わらず、キーパーもしっかり見れていて、「さすがにここは無理だろう」と軸足の横に打ちました。

 

杉岡:それまでの58分間ボールを触ってないですからね。よくやってくれました。僕はその時ベンチに下がって治療をして、(松下)海が7mスローを打つところは見えない位置にいたので、歓声で判断しようと思っていたんですけど、ベンチの誰かが「うわっ」って言ったんで、「うわっ、外したんか」と思って、点数を見たら、「入ってるやん」って。実はその後のゴールも見てないんですよ。

 

―松下選手の7mスローでリードするも、残り1分に追いつかれます。そして残り25秒、27-27の同点の場面、松下選手のサイドシュートで再びリードします

 

松下:最初はプレーオフ前に結構練習していたフォーメーションで、アンドレが打つ形を狙ったんですけど。

 

櫻井:それで攻められなかったんだよね。

 

松下:それで、もう一回ボールを回して、トリムがアタックして。トリムは普段はあんまり外にパスをしないんですけど、あの場面はめちゃくちゃいいパスが来て、『今、来るんかい!』って思いました。

 

渡部:あの日のトリムはすごかったよね。

 

櫻井:めちゃくちゃパフォーマンスが良くて、今まで見たことのないシュートを決めてたし、大舞台で力を発揮するタイプなのかなと思いました。

 

松下:(北詰)明未さんが怪我をしたので、腹をくくったのかもしれないですね。吉野さんがセンターをやるから、『自分が頑張らんと』と。

 

―ジョンセン選手のパスを受けた松下選手が、しっかりとシュートを決めました

 

松下:ボールを持ってからは記憶にない。気がついたら、決まっていたという感じで、無我夢中で決めた1本だったなと思います。

 

櫻井:僕もびっくりしました。『海が決めた!』って。

 

杉岡:海って、決勝で出たことあるの?

 

松下:去年はベンチには入っていたんですけど、1秒も出てないので、人生初の決勝です。ラッキーボーイと言われましたけど、たまたま最後にチャンスが回ってきただけ。それまでにディフェンスではアイクと颯太が頑張っていたし、杉岡さんも言ってましたけど、ミスがあって負けパターンの中で、みんなでつないできた。それまで僕だけが試合に出ていなくて、何かの形でチームの勝利に貢献したいと思っていたので、結果を出せてよかったです。

 

 

 

―その1点を守り切って、勝利しました

 

富永:海が決めた後、すぐに相手がタイムアウトを取って。

 

杉岡:7人攻撃をしてきたら、6-0で守るという話だった?

 

富永:そうです。髙野が一人ひとりの服を引っ張ってみんなを集めて、「相手がこうきたら、こうするから」と確認できたので。

 

櫻井:あの時は珍しくみんなでガッと固まったよね。

 

松下:(加藤)芳規さんも喋ってたよね。「右で勝負する」って。

 

櫻井:狙い通り、ベタベタに守って、最後は芳規さんの得意な形でしたね。

 

杉岡:でも、めっちゃ怖かったと思うんですよ。キーパーはあの角度で飛び込まれるのは嫌なんですよ。小塩(豪紀)さんはシュート上手ですし。相手が得意なシュートコースでジャストミートで打って、それを止めたのは、本当にすごいなあと思いますね。

 

松下:帰りのタクシーが芳規さんと一緒だったんで、「すごかったですね」って言ったら、「ああいう時は、得意なコースに打ちたいでしょ。だから先に遠めに動いて打ちやすいようにしてた」と言ってました。『この人、めっちゃ冷静や』と思いました。

 

杉岡:そうそう、近めを空けてたよね。

 

渡部:あの試合は、キーパー2人がすごかったですね。芳規は野生っぽいんですけど、意外にデータとか癖とか、結構頭に入っているんです。

 

杉岡:僕は普段打っているから分かるんですけど、彼はめっちゃ駆け引きしてきますよ。

 でも、正直、合成があそこで勝負してくると思った?

 

松下:出村(直嗣)さんが7本中2本しか決めてなかったから、小塩さんの方に持っていったのかなと。最後の仁さんの削りも効いていましたね、小塩さん、ちゃんと飛び込めてなかったんで。

 

―その後の終了のブザーが鳴るまで10秒間もドキドキしました

 

渡部:芳規が櫻井に出して、櫻井から僕が一番深いところでパスをもらって。パスをつないで時間をつぶそうと思ったんだけど、出すところがなかったんですよ。それで1人交わして、ドリブルして、左に吉野が来たのでパスしたんですけど、杉岡はめちゃくちゃ危なかったっていうんですよ。

 

杉岡:3年間のトラウマがあったので、最後の最後まで気が抜けないなと。芳規さんが止めて、「やったー」ってなったんですけど、あの10秒はめちゃくちゃ長く感じました。

 

富永:仁さんがドリブルついた時にニヤってしたので、そこで僕は勝利を確信しました。

 東京に移動する前日に紅白戦をした時に1点差の全く同じシチュエーションになって、オールコートマンツーマンについたら、リードしているチームがゴールキーパーにパスを出して、相手ボールになったんです。

 

杉岡:試合終了間際にゴールキーパーにパスをすると、攻める姿勢がないとみなされてファウルになるんですよ。あれを経験していてよかったなって思いますね。

 

富永:「あれ? 見たことのある、この景色」って思いました。

 

渡部:そういう意味でも、本当に全ての歯車が噛み合った勝利でした。

 

富永:それこそ、3年前のエントリオでのファイナルが今に生かされたのかなと思いますね。だから、終わってすぐに藤本(純季)さんに言いましたもん。「あの経験のおかげです」って。

 

(渡部、櫻井と話し合う#17髙野)

 

 

 

杉岡:去年と違うなと思うのは、アイクの急成長と髙野のリーダーシップがチームに加わったこと。真ん中にいる髙野、山田(信也)は年齢的に下なので、若手気分があったと思うんですよ。

 髙野は元々いいディフェンダーではあるんですけど、最後にみんなを集めて指示をしたりというのはこれまではなかったですし、アイクも(櫻井)睦哉と言い合いをしてディフェンスを良くしてきたり、気を抜いているチームメイトを叱咤したりというのは、これまでにはなかったことなので。たしか、後半の不正入場(※編注)の時も、アイク、めっちゃ声かけてなかった?

 

(※編注)外国籍選手が3人以上同時にコートに立てない規定に反し、結果的に1人が2分間退場に。

 

富永:かけました。僕はディフェンスだけでベンチに帰ってくるんですけど、ベンチに戻ってきたら、哲さん(門山チームディレクター)もパウエルもまだ頭を抱えていたんで、「いつまで頭抱えてるんだよ。絶対に勝つから見とけ、絶対に頭を下げるな。やるぞ」と励ましました。

 

杉岡:勝因はディフェンスだとずっと言ってきましたけど、アイクと髙野が若手から抜けて、チームの中心になったことが、今シーズンの一番大きかったことだと思います。

でも、ちょっと褒めすぎたので、今の話は書かないでくださいね。話している時に、アイクの鼻の下がめっちゃ伸びてて、ちょっとむかついたので。

 

全員:(爆笑)。

 

―では最後にファンの方へのメッセージをお願いします

 

櫻井:優勝という結果が得られたのは、自分たちの努力もそうですが、会社やスタッフの方のサポート、ファンの皆さんの応援があってこそだと思っています。

 来年は、合成も悔しい気持ちをぶつけて成長してくると思うので、僕らも負けずに成長して、それを跳ね返して、2連覇、3連覇と、ブレイヴキングス刈谷の歴史を作っていきたいです。

 仁さんが(社内)報告会で言っていたように、この体育館のスペースが足らなくなるくらい、たくさんの優勝フラッグを持ち帰れるように、引き続き頑張ります。

 

富永:1年間応援ありがとうございました。ホームゲームをやる中で、年々お客さんが増え、ファンの皆さんの熱い気持ちが増してきているのを感じています。僕たちもそれに負けないような熱いゲームを続けていきたいと思っています。

 プレーオフで優勝して、最高の景色を皆さんにお届けできたことをとてもうれしく思っていますが、ここで満足するチームではないとも思っています。2連覇、3連覇と、ブレイヴキングス刈谷の時代を作れるように、日頃の練習、小さな積み重ねを怠らずにやっていきますので、これからも熱い応援をお願いします。

 

松下:今アイクが言ってましたけど、僕もホームゲームの熱さをすごく感じますし、会社でも会場でも「頑張ってね」「良かったよ」と声をかけていただくたびに、たくさんの人に支えられていることを実感しています。それが日々のハードなトレーニングに励む力になっています。

 今回、優勝という結果で恩返しできて、選手として一つ使命を果たせたかなとホッとしていますが、これに浸りすぎず、自分たちの限界を超えることに挑戦していきたいと考えています。自分たちは2位の悔しさを一番知っているチーム。負けたくない気持ちが一番強いチームです。また最高の景色が見られるように、みなさんと共に一つづつ積み重ねていきたいと思います。

 

杉岡:ずっと2位が続いていた中で、それでもファンの皆さんが僕たちを信じて応援してくれて、本当に感謝しています。ファンの皆さんにこれ以上悔しい思いをしてほしくないという気持ちが、ファイナルの最後の最後で僕たちが踏ん張る力になりました。

 来シーズンはチャンピオンとして、追われる立場になりますが、僕らはチャレンジャーとして、もっともっと貪欲に成長していきたいと思っています。この優勝はゴールじゃない。来年は2連覇にチャレンジしますので、これからも一緒に戦ってください。

 

渡部:ファンの皆さんには「本当にお待たせしました」というのが率直な気持ちです。今シーズンは、『歓喜の瞬間を共に』というテーマを掲げて戦ってきて、キャプテンを任されたシーズンでそれを実現できたことを本当にうれしく思います。

 来シーズンはさらに強くなったブレイヴキングス刈谷を見せられるようにしっかりと準備をしていきます。来シーズンも会場の熱狂空間で皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。

 

2026/06/24

【2025-26 #7】プレーオフ直前! 山田信也 × 髙野颯太 副キャプテン対談

(㊧髙野選手 ㊨山田選手)

 

 安定感のある戦いを続け、チーム記録となるリーグ24連勝を達成。レギュラーシーズン25勝1敗で、2年連続でレギュラーシーズン優勝に輝いたブレイヴキングス刈谷。7年ぶりの頂点を狙う「2025-26 リーグH プレーオフ」を前に、副キャプテンを務める髙野颯太選手、山田信也選手が熱く語った。

(取材・文/山田智子)

 

 

▶山田信也選手のプロフィールはこちら

 

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―レギュラーシーズンは25勝1敗。2シーズン連続のレギュラーシーズン1位が確定しました

 

山田:今シーズンはこれまでで一番変化の大きいシーズンでした。前半戦は(髙野)颯太や(渡部)仁さん、外国人選手の怪我もあって、うまくいかない試合も多かったのですが、1試合1試合なんとかみんなで踏ん張って、勝利を重ねながら、ラース(・ウェルダーHC)が新しいことを色々と試してきました。

 

最も良くなったのはディフェンスです。昨シーズンからディフェンスのシステムを探ってきたのですが、中断期間中に取り組んだ5-1ディフェンス(※編注)が、試合を重ねるごとに良くなって。それが、24連勝という結果につながったと感じています。

 

(※1人がトップに浮き出し、残り5人で後ろを守るシステム)

 

―5-1ディフェンスは、髙野選手が復帰にあわせて取り組んだのですか

 

髙野:僕とアイク(富永聖也)がトップに入る形で、5分間くらい5-1ディフェンスに変えることはそれまでにもちょこちょことありましたが、1試合通して本格的に5-1ディフェンスを始めたのは今年になってからです。ラースが年明けに突然変えたので、年末にデンマークに一時帰国した時に何かあったのかなと(笑)。

 

山田:僕は、その時は代表合宿に参加していました。その間にチャレンジ・ゲームズ(今季開催したカップ戦)が行われていたんですけど、映像を見たら、「えっ? めちゃくちゃ変わってるやん!」って驚きましたね。代表合宿から帰ってきたら全く違うことをやっていたので、間違って別のチームに帰ってきたかと思いました。

 

―2年以上にわたって6-0ディフェンス(※編注)の質を高めてきて、いきなり5-1に変更するのは大変ではなかったですか

 

(※6人が横一線で守るシステム)

 

髙野:慣れるまでは少し戸惑いました。6-0はどっしり構えて守るので、選手があまり動かないのですが、5-1はボールに全員で寄って、かなり動くディフェンスで、全く感覚が違うので。

 

山田:最初はなかなかハマらなかったですね。練習でも結構やられたりしていたんですけど、試合を重ねるごとに完成度が高くなってきて、今は5-1ディフェンスの方が守れるなという感覚があります。

 

 

―5-1ディフェンスのどんな点がハマったのでしょうか

 

髙野:5-1は、トップディフェンダーが相手のバックプレーヤーのパスコースに入って、パスのスピードを落とさせたり、相手に走り込ませないようにして、相手にスムーズに攻撃させないようにすることが第一の狙いですが、そこがうまく機能していると感じています。

 

ただ、後ろは1人少なくなって、さらに全員でボールに寄るので、逆のサイドが空いてしまいます。それを運動量でカバーしなければならないので、めちゃくちゃ疲れるんです。今はだいたい15分くらいで全員が交代するのですが、僕たちは誰が出ても強度が落ちない。選手層が厚いという強みを生かせるシステムと言えるかもしれません。

 

山田:ロングシュートを打たれにくくなるのも5-1ディフェンスのメリットですね。真ん中からシュートを思い切り打つのって気持ちがいいじゃないですか。守る側からすると、それをさせたくない。

 

豊田合成ブルーファルコン名古屋とのリーグ戦1周目(9/13)は6-0ディフェンスで戦って、真ん中からシュートをバンバン打たれて、失点して負けました(29●39)。でも、2周目(2/21)で5-1ディフェンスに変えたら、真ん中からシュートを打たれることもなかったですし、相手もやりづらそうだと感じました(31○30)。まあ、プレーオフで対戦する時に、どちらのディフェンスで臨むかはわからないですけどね。

 

髙野:5-1ディフェンスで1試合通す試合があったり、途中で6-0に変えたり、ラースも両方の感覚をなくさないように配慮してくれている。練習でも両方を混ぜて、どちらもできるように準備しています。

 

 

 

―オフェンスではどのような変化がありましたか

 

山田:今シーズンは新しくトリム(・ジョンセン)とアンドレ(・ゴメス)が入ってきて、最初はなかなかコミュニケーションが取れていない部分がありました。僕たちは英語が話せないし、彼らも初めて日本に来て様子を見ていた部分もあったと思うんです。でも、トリムがめちゃくちゃ陽気な性格で、どんどんコミュニケーションを取ってくれて。ハーフタイムにも積極的に意見を言ってくれるので、少しずつお互いの考えを理解できてきて、後半戦はかなり噛み合ってきていると感じています。

 

―オフェンスの変化で言えば、髙野選手は昨シーズンまではディフェンスに専念という形でしたけど、今シーズンからはオフェンスにも加わっていますね

 

髙野:ラースから「ポストをやってみないか」と言われて、びっくりしました。やっぱりディフェンスもオフェンスも両方やるのはキツいですね。今まで、ディフェンスだけでだいぶ楽をしていたんだなと痛感しています。

 

しかも、今は5-1ディフェンスが主体で、ディフェンスだけでも昨シーズンよりもかなり動く。(ハーフ)30分フルに出るのは無理なので、出ている時間は全力でプレーして、あとは(山田)信也さんと田代(翔真)に託す。

 

山田:特に後半はしんどいので、時間を分け合っています。後半のスタートは颯太が出るんですけど、様子を見ながら、疲れてそうだなと感じたら、「田代、早めに準備しといた方がいいぞ」とか。

 

髙野:疲れてきたら、チラチラっとベンチの信也さんを見たり。

 

山田:真ん中の3人は疲れるポジションということもあって、ラースからも自分たちの判断で交代していいと、ある程度任せてもらっているので。疲れたらすぐに交代して、運動量を落とさないようにしています。

 

髙野:あと、今シーズンのオフェンスの変化でいうと、7人攻撃ですね。後半戦の初戦のジークスター東京戦、前半リードしている場面で、いきなり7人攻撃をして、それがすごくハマったんですよ。

 

山田:ラースは「一気に突き放すためにやった」と言ってましたね。それがうまくいって、オフェンスの「手札」が増えた手応えがありました。

 

 

―そういえば、昨シーズン終了後の座談会で、まさに「手札」の話をしていましたね。藤本純季さんが「停滞した時に流れを変えられる『カード』を1年かけて作っていかなければならない」とおっしゃっていました。まさに、今シーズンを通して、攻守の手札を増やしてきたことが、3年ぶりの豊田合成戦での勝利につながったということですね

 

山田:その通りだと思います。ここで1本だけ7人攻撃をしてみようとか、少しディフェンスを変えてみようとか、今シーズンは流れを変えるための手札がたくさん増えました。まだ試合ではやったことのない手札もいくつかあるんですよ。プレーオフでも必ず相手のリズムになる難しい時間帯があると思うので、そういう場面で準備してきた手札を使っていきたいです。

 

髙野:どの手札も、「これをやるよ」と言われて、パッとできる状況にはなっているので、ここからプレーオフまでにさらに細かい部分を詰めていきたいと思います。

 

―豊田合成戦、3年ぶりの勝利はどんな感覚でしたか

 

髙野:そうですね。しばらく勝っていなかったので、勝ち方を忘れていたのですが、今シーズンで一番いい試合をして、豊田合成に勝つことができて、なんかもう、感情が爆発してしまいました。会場も『優勝したんじゃないか』という雰囲気だったじゃないですか。本当に最高でした。

 

山田:あの試合は全員が活躍していたので、本当に優勝したみたいにうれしくて。勝った瞬間は、全員が訳のわからない動きをしていましたね。あの時の写真を見返すと、『何してんの?』って思うくらい(笑)。みんながいろんなところに向かってガッツポーズをして叫んでいたので。

 

―久しぶりに勝って、勝ち方を思い出しました?

 

髙野:「勝てるやん」みたいな感じでしたね。

 

山田:今までは毎回大事な試合で負け続けていたので、「やっぱ、強いなあ」という感じでしたけど、今回勝って自信になったというか、「勝てるやん」みたいな感じでした。ずっと応援してくださっている方の中には、泣いて喜んでくれている人もいました。会社の方からも何件かメールをいただきました。

 

でも、まだレギュラーシーズンで勝っただけなので、それをもう一度プレーオフで再現して、優勝したいです。

 

 

―過去のプレーオフで学んだ教訓はありますか

 

山田髙野:最後まで気を抜かない!!

 

山田:忘れもしない2022-23シーズンのプレーオフ。おそらく第1延長の残り1分半で3点リードした時に、全員が『勝った』と思ったと思うんですよ。勝負事は、『勝った』と思った瞬間に負ける。あの試合も土壇場で追いつかれて、第2延長、7mスローコンテストの末に負けてしまいました。

 

髙野:その教訓があったから、今年2月の豊田合成戦は最後まで全員が集中していて、勝ち切ることができました。

 

でも、最終戦(5/23)の福井永平寺ブルーサンダーとの試合は、3点リードされる場面もあって、全体的にあまりいい試合ではありませんでした。リーグ優勝が決まって、「でも、プレーオフに向けて、いろいろとチャレンジする試合にしよう」と話をして臨んだのですが、心のどこかに緩みがあったのかもしれません。

 

山田:結果的には勝ちましたし、もう一度プレーオフに向けて気持ちを引き締め直す、良い機会になったかなと思います。

 

―では、あらためてプレーオフへの意気込みを聞かせてください

 

髙野:いよいよだなと、今はすごくワクワクしています。でもいざ試合になったら、緊張して硬いプレーになったり、苦しい場面が出てきたりすると思うんですけど、そういう時こそチームとして全員で支え合って戦うことが一番大事になってくると思います。

 

リーグ戦で豊田合成に勝った時の喜びをもう一度味わいたいし、ファンの方や会社の方たちもたくさん応援に来てくれると思うので、今年こそは必ず勝って、皆さんに恩返しをしたいです。

 

山田:まずは初戦。対戦相手がどちら(レッドトルネード佐賀と大同フェニックス東海の勝者)になるかはわからないですが、1戦目の出来は必ず決勝に影響しますので、スタートから全力で戦いたいと思っています。

 

今年は、長年チームに貢献した高智海吏さんが引退されます。高智さんは僕が入団した時にはもう大ベテランだったんですけど、どんなキツいランニングトレーニングも先頭で走ってチームを引っ張ってくれて、苦しい時も「高智さんがやっているから、頑張ろう」みたいな雰囲気を作ってくれました。高智さんに有終の美を飾ってもらうためにも、自分のためにも、応援してくださる方たちのためにも、優勝したい。

 

皆さんにリーグ戦の時以上にめちゃくちゃ泣いてもらえるように頑張りたいと思いますし、僕たちも、「何してんの?」と言われるくらい、リーグ戦の時以上に意味のわからない動きをしたいです(笑)。

 

髙野:僕たちは優勝したことがないので、優勝したらどうなるか本当に想像できないです。

 

山田:僕が内定した前年に優勝しているんですよ。でも僕と颯太が入ってからはずっと2位で。

 

髙野:シルバーコレクターと呼ばれてきた悔しさを、今年こそ晴らしたい。

 

山田:一度勝てば、気持ちが楽になって、ここから長く連覇ができるんじゃないかと思います。僕は毎年泣いているんですけど、今年はうれし泣きで終わりたいです。

 

2026/06/09

【2025-26 #6】パウエル・パチコフスキー選手インタビュー「運命を変えた突然の電話 和を重んじる男が目指す約束の優勝」

 

 パウエル・パチコフスキー選手のインタビューが決まった数日後、「早めに質問案をいただけませんか」とチームから依頼があった。「できるだけ日本語で答えたいから」、事前に準備をするためだという。

 

 「はじめまして、パウエル・パチコフスキーです」

 「日本語、お上手ですね」

 「いえいえ、まだまだです」

 

 謙遜をも自在に使いこなす、パチコフスキー選手は加入2年目。ブレイヴキングス刈谷初の外国人選手だ。1年目はリーグHベストセブンにも輝いた。加入するまでのキャリアや日本での生活、チーム初の17連勝を続ける今シーズンについて、日本語と英語を取り混ぜながらじっくりと話を聞いた。

 

 

―パチコフスキー選手の出身地であるポーランドは、ハンドボールの人気がとても高いと聞きました

 

パチコフスキー:おそらく国内で6、7番目くらいに人気です。一番人気はサッカー。続いてバレーボール。スキージャンプ、陸上、バイクレース。その次くらいですね。

 

でも、特定の都市の熱狂ぶりは凄まじいですよ。アリーナも満員になりますし、スタンディングでサッカーのような応援が繰り広げられます。

 

非常に情熱的なポーランドの応援に対し、日本はいい時も悪い時も、勝っても負けても、どんな時も温かくサポートしてくれるのが伝わってくるので、とても心地よくプレーできています。

 

―ハンドボールを始めたきっかけは何だったのでしょう

 

パチコフスキー:父が若い頃ハンドボールをしていました。その後はしばらくハンドボールから離れていたのですが、僕が小学校3年生の時に父と父が教わっていたコーチがハンドボールのチームを作りました。その時僕はバスケットボールをしていたので、すぐには入らなかったのですが、友達がそのチームに入ったので、僕も2週間遅れでハンドボールを始めることにしました。

 

チームメイトは2週間早くスタートしていたので、最初はついていけずに戸惑いましたね。

 

 

―プロになろうと決めたのはいつ頃でしたか

 

パチコフスキー:13歳か14歳くらいの時にはプロを意識していました。「自分ならできる」という確信もありました。僕は人口が3万5000人くらいの小さな町で育ちましたが、小学校の頃からベストスコアラーやMVPを取っていました。15歳で3歳上のカテゴリーの代表チームに選ばれたので、おそらく自分にはプロになるポテンシャルがあると感じるようになったんです。

 

実際に、日本で言うブレイヴキングス刈谷と豊田合成ブルーファルコン名古屋のような、ポーランドリーグのトップ2チームの両方から、15歳前後でアーリーオファーをいただきました。

 

―ユース年代の頃、プロになるために特別に取り組んだことはありますか

 

パチコフスキー:自分の人生の全てをハンドボールに注ぎ込むと決意して、とにかく練習をたくさんしました。友達が遊んでいる時も、僕はずっと試合や合宿、トレーニングをしていました。

 

朝7時から朝練、放課後も練習しました。朝は苦手なのですが、雪が降る暗い道を歩いて学校まで行って、朝練をしたのを今でも覚えています。

 

―そうした努力があって、Wisia Plock(ヴィスワ・プウォツク)でプロキャリアをスタートします

 

パチコフスキー:16歳の時に入団して、最初はセカンドチームでした。1年目でファーストチームに昇格しました。

 

―それはすごいですね。当時Wisia Plockwhを率いていたのがラース・ウェルダーHC(現ブレイヴキングス刈谷HC)ですよね

 

パチコフスキー:そうです。1年半くらい一緒に戦いました。ラースは僕のことを信頼してくれて、試合に出るチャンスを多く与えてくれました。

 

当時、日本代表とも対戦しましたよ。哲さん(門山哲也チームディレクター)と松さん(松村 昌幸アシスタントコーチ)がいたそうです。1人、小柄でめちゃくちゃ速い選手(宮﨑大輔)がいたことをよく覚えています。

 

 

 

―欧州やポーランド代表で活躍後、昨シーズンからブレイヴキングス刈谷に加入しました。加入の決め手は何だったのですか

 

パチコフスキー:全く予想外の展開でした。クラブワールドカップでサウジアラビアにいる時に突然ラースから電話がかかってきたんです。それまでは全く連絡を取っていなかったので驚きました。

 

ラースは、ブレイヴキングス刈谷がどのようなチームで、どのようなゴールをめざしているか、そしてそれを成し遂げるために僕にぜひ来てほしいと熱く語ってくれました。

 

その言葉に動かされ、僕もこのチームが目指している優勝という目標を一緒に成し遂げたいと思いましたし、いくつか映像を見る中で、このチームの特性が自分に合いそうだとも感じました。

 

―チームの特性ですか?

 

パチコフスキー:非常に能力が高い選手がいて、プレーの質も高いので、このチームの助けになれそうだなと思いました。

 

―実際に日本に来ていかがでしたか

 

パチコフスキー:暑い!(笑)ちょうど来たが8月だったので。

 

驚いたのは、日本人が全てにおいてきちんとしていて、礼儀正しいこと。「Not外国人」な、人とほどよい距離感を保ち、公共の場所で騒いだりしない、穏やかな振る舞いに好感を持ちました。

 

―日本の生活で困ったことはありませんでしたか

 

パチコフスキー:最初は言葉の壁にストレスを感じて、外出するのを控えていました。

 

日本のしきたりや文化を尊重しようと思っていたのですが、ポーランドでの生活が長かったので、順応するのが少し難しかったですね。

 

―ハンドボールにおいては違いを感じる部分はありましたか

 

パチコフスキー:日本の選手が何をしてくるか予想するのが難しい時がありました。戦術的な違いというよりは、「慣れ」に近い部分です。例えば、速攻の時の相手ゴールキーパーが6mライン付近に立っているとか。子どもの頃から叩き込まれている国ごとの違いに少し戸惑うこともありました。今はもう、全く問題ないですが……。

 

―今シーズン、アンドレ・ゴメス選手とトリム・コルペルド・ジョンセン選手の2人の外国人選手が新たに加わりました。先輩として何かアドバイスしましたか

 

パチコフスキー:2人とも偉大な選手なので、ハンドボールに関しては何も言うことはありません。日本の生活については、教えることはありますよ。例えば、「饅頭」と「大福」の違いとか。

 

―3人で一緒に過ごすことが多いのですか

 

パチコフスキー:3人だけで固まらず、日本人選手も含めて、みんなで食事に行ったりすることを大事にしています。よく一緒にいるのは、さっちゃんと(松下)海と(田代)翔真。時々、吉野(樹)。

 

―さっちゃん?

 

パチコフスキー:岡本翔馬です。たまたま「さっちゃん」という柴犬の動画を見つけて、それが岡本翔馬にちょっと似ていたので。うちのチームは「ショウマ」が2人いるので、ちょうどよいあだ名になりました。

 

―日本語も熱心に勉強しているそうですね。好きな日本語は何ですか

 

パチコフスキー:「口寂しい」。音の響きが好きですし、意味も可愛い。「足首」も響きが好きです。

 

―口寂しいが好きということは、食べることも好きですか。好きな日本の食べ物は?

 

パチコフスキー:「台湾まぜそば」です。「台湾」と名前に入っていますが、名古屋発祥の料理なんです。自炊もしますよ。ご飯、パスタ、卵料理、オートミール、パンケーキを作りますね。

 

 

 

―2年間ブレイヴキングス刈谷で過ごして、チームとしてどんなところに成長を感じていますか

 

パチコフスキー:今シーズンは外国人が2人加わったことにより、戦術の幅がかなり広がりました。チームとしての辛抱強さが増した印象があります。

 

―そうした進化が、豊田合成戦の勝利につながったのですね

 

パチコフスキー:リーグ戦の中で豊田合成戦は最も重要な試合でした。長い間勝てていなかった宿敵・豊田合成に勝利することができたことは大きな自信になりましたし、非常に興奮しました。でも2日後にトヨタ自動車東日本レガロッソ宮城(TMEJ)戦が控えていたので、あまり余韻に浸ることなく、すぐに切り替えました。リーグで1位を勝ち取るためには、TMEJに負けることが一番よくないことだったので。

 

―現在、チーム新記録となる17連勝中です。ここからの戦いで重要になってくることはなんでしょうか

 

パチコフスキー:全ての試合に勝ち、リーグ1位を勝ち取ることです。そのためには、自信をもって、自分たちの今のレベルを保ち続けること。そして、小さなミスをなくしたり、より質を高めたり、小さなことを少しずつ積み重ねていくことです。その小さな積み重ねがやがて大きな変化へとつながっていくからです。

 

―最後にファンの皆さんへのメッセージをお願いします

 

パチコフスキー:皆さんが試合に来て応援してくださることが、僕たちの力になっています。めっちゃ感謝しています。これからも応援よろしくお願いします。

 

―――――――――――――――

 

 取材が終わると、パチコフスキー選手は立ち上がって、「今日はありがとうございました。お気をつけて」とデパート店員のように両手を前に組んで見送ってくれた。日本の文化を尊重し、それを学ぶことを喜びとし、チームに溶け込もうと努力する。彼の誠実な振る舞いの積み重ねが、今のチームの強固な結束力を支えていると感じた。

 

取材・文/山田智子

 

 

▶パチコフスキー選手のプロフィールはこちら

2026/04/23

【2025-26 #5】北詰明未選手インタビュー 「代名詞」1対1の極意とは

 キュンキュンと、ディフェンスに触れさせることすら許さない#24・CB北詰明未(きたづめ・あすみ)選手のキレのあるカットイン。その裏には、独自の「感覚」と「思考」があった―。

 

▶北詰選手のプロフィール

 

 

 

―北詰選手は加入当初はレフトバック(LB)で、そこからセンター(CB)に転向されたんですよね

 

北詰:ブレイヴキングス刈谷に入って2年くらいはLBで出させてもらっていました。でも、日本代表ではセンターを任されることが多かったので、ブレイヴキングス刈谷でもセンターをやりたいと監督に伝えました。

 

中学高校時代はずっとCBをやっていたんですよ。大学では3年生まではLBで、4年生の時にCBの先輩が引退されて、そこから僕がCBを任されるようになりました。

 

―ハンドボールは中学から始めたのですか

 

北詰:そうです。小学校まではミニバスのチームに入っていました。中学でもバスケを続けようと思っていたのですが、バスケ部に仮入部したときに筋トレばかりで全くシュートを打たせてもらえなくて……。楽しくないなと思って、ハンドボール部に行ってみたら、「どんどんシュート打っていいよ」と、その時は先生も優しかったんですよね。でも、いざ入部したら、豹変して(笑)、バスケ部より厳しかった。だまされるようにハンドボールを始めたのですが、今は続けてきて本当に良かったと思っています。

 

―LBとCBでは役割が異なります。転向する際、どのような難しさがありましたか

 

北詰:CBは攻撃をコントロールするポジションでもあるのですが、最初は1人でガツガツやろうとしすぎて上手くいかないことが多くありました。CBはこうあるべきだという正解があるわけではないのですが、自分は1対1や得点力に自信を持っているし、目の前に人がいたら抜こうとするタイプ。ある意味で、1対1が癖付いてしまっているので、自分の得点力を生かしながらも周りを生かす、そのバランスを取るのが最初は難しかったですね。

 

―その課題をどのように克服していったのですか

 

北詰:海外選手の映像を中心に、本当にたくさんの映像を見ました。

 

―国内ではなく、海外ですか?

 

北詰:僕は世界基準のプレーを意識しているので、世界ではどういうトレンドなのか学ぶことを常に意識しています。日本代表として、世界で戦うためにはどうすればいいのかということも常に考えています。

 

試合中も、ずっと頭をフル回転させているので、身体より脳みそが疲れます。

 

 

―CBとしてのご自身のプレーに手応えを感じられるようになったのは、いつ頃からですか

 

北詰:僕のスタイルができたなと思えたのは、本当に最近です。ヘッドコーチがラース(・ウェルダー)に替わったことがきっかけでした。

 

ラースは本当にポジティブで、「自分を信じろ」という言葉をいつも掛けてくれます。彼の信頼に応えようと頑張ったことで殻を破れた部分もありますし、戦術的にもCB専用のフォーメーションが増えたので、気持ちよく1対1を仕掛けられるということもあります。

 

 

 

 

―1対1は北詰選手の代名詞でもありますし、ブレイヴキングス刈谷の大きな武器でもあります

 

北詰:1対1に関しては、日本でトップ3に入るという自負を持っています。

 

―ちなみに、あとお二人は?

 

北詰:藤坂尚輝選手(大同特殊鋼 Phenix TOKAI)と安平光佑選手(ブルガンSC/クウェート)もうまいですよね。

 

―でも、藤坂選手も安平選手も小柄な選手ですね

 

北詰:身長があって動ける選手は、僕だけです。あっ、(吉野)樹さんもうまいですね。

 

―言葉で表現するのは難しいですが、吉野選手とは抜き方のスタイルが違う感じがします。北詰選手はスピードだけではなく、「キュンキュン」と切れ味鋭く抜いていく印象がある。カットインのコツのようなものはあるのですか

 

北詰:言葉にするのは難しいのですが、『いいタイミングで1対1に入れば、絶対に抜けるな』という感覚があるんですよね。

 

ディフェンスの身体の向きなのか、重心なのか、僕自身もどこを見ているのかわからないのですが、『この人はこっちを守りたいのかな』という雰囲気があるので、その逆をつくイメージですね。

 

―雰囲気……ですか

 

北詰:それが上手くいくと、キュンキュンとディフェンスに触れられずに抜けるんです。

 

―その感覚が外れた時は、強引に力で抜きますか

 

北詰:僕は、無理はしないです。なるべくボールを失わないように、フリースローでもう一度仕切り直します。ディフェンスを引きずって、ゴリゴリっといく人もいるんですけど、僕はボールを失わないことを優先します。

 

 

―なるほど。状況判断やシュートセレクションがいいので、シュート確率が高くなるんですね(※編注)

 

北詰:若い時は多少強引にでも抜いてやろうという気持ちがありましたが、そこでミスをして試合の流れが変わってしまうリスクもある。今はギャンブル的なプレーはしないように意識しています。

 

ただ、ミスを怖がりすぎてチャレンジができなくなるのもよくない。時には「自分がガンガン行ってやろう」という気持ちを出してもいいかなとも思っています。

 

―ディフェンスも北詰選手がカットインしてくるだろうとわかって守っている。にもかかわらず、そこを抜いて得点できるのは唯一無二の武器だなと思います

 

北詰:僕のカットインもそうですけど、ラースのハンドボールも研究されてきているので、「次」を考えなければいけない。ラースの求めるハンドボール以上のものを見つけて、それを試合で出していかなければ、優勝はできないと思っています。

 

そういう部分で、1対1は僕の武器ではあるのですが、それにこだわりすぎず、次の武器を鍛えていかなければと取り組んでいるところです。

 

―今のお話にも繋がるのですが、後半戦に向けて、中断期間に取り組んだことを教えてください

 

北詰:前半戦は新しく加入した選手とのタイミングが合わず、自分たちのリズムを失っていた部分がありました。中断期間でコンビネーションを高めながら、今まで積み上げてきた戦術をもう一度基本から見直して、質を高めてきました。全員がパワーアップできた、手応えのある中断期間を過ごせました。

 

―ファンの方へ、後半戦の意気込みをお願いします

 

北詰:いつも応援ありがとうございます。昨年の日本選手権では僕たちも本当に悔しい思いをしましたし、ファンの皆さんにも残念な思いをさせてしまいました。その悔しい気持ちを忘れず、後半戦はプレーオフで優勝できるように頑張りますので、引き続き熱い応援をよろしくお願いします。

 

取材・文/山田智子

 

 

(※編注)北詰選手の今季のシュート成功率は77.8%(26年2月12日現在)。60%がバックプレーヤーの基準と言われる中、かなりの高確率です。

2026/02/12

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