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ブレイヴキングス刈谷に関わる「ヒト」に焦点を当て、表面の部分だけでは決して見えてこない、その想いや考え、行動の原点にフォーカスしインタビューやコラムで紹介していきます。
12月に行われた日本選手権。9年振り3度目の優勝を目指して臨んだブレイヴキングス刈谷でしたが、またしても決勝で豊田合成ブルーファルコン名古屋に1点差で惜敗、準優勝に終わりました。座談会の第2部では、日本選手権の舞台裏や、この悔しさを糧にどのようにリーグH後半戦へ挑むかなどを、岡本大亮選手、髙野 颯太選手、櫻井睦哉選手、渡部仁選手に聞きました。
ディフェンスは後半戦に向けて大きな自信に
―12月の日本選手権大会は、残念ながら準優勝という結果でした。
渡部:初戦の日本体育大学戦は39-26と点差は開きましたが、試合終盤は良くない時間帯がありました。ラースヘッドコーチ(HC)からもその点を指摘されたので、2試合目のゴールデンウルヴス福岡戦でしっかりと立て直し、3試合目は1週間前に行われたリーグ戦で引き分けたジークスター東京に接戦で勝つことができて、いい流れで決勝を迎えることができました。
髙野:(渡部)仁さんが言った通り、決勝までの流れがすごく良くて、決勝でも順調な入りができました。そのままの勢いでいけるかなと思っていたのですが、後半失速してしまいました。自分自身もレッドカードをもらって しまい、チームに迷惑をかけてしまいました。
櫻井:決勝の後半の立ち上がりに相手が修正してきたのですが、それに自分たちが対応できず。徐々に点差を詰められて、延長で負けてしまいました。パリオリンピックでも同じような逆転負け、1点差負けの試合を経験しましたが、あらためて後半の立ち上がりの大切さを痛感させられました。
岡本:ただ、大会全体を振り返ると、失点がかなり少なかった。そういう意味ではディフェンスが機能したという手応えを感じられた大会でした。僕たちゴールキーパーとしても取りやすいシュートが多かったですね。決勝では、後半は攻めあぐねて、逆速攻を食らって失点してしまったところがありましたが、それ以外のディフェンスは非常に良かったと思います。
渡部:決勝は26失点なので、ゴールキーパーを含めたディフェンスはすごく機能していましたね。一方で攻撃は25点と全然点が取れなかった。具体的に何分ごろというのは覚えていないのですが、後半急に攻撃がしづらくなった感じがありました。シュートを打ちに行ったというか、打たされているような感覚。そうして攻撃が手詰まりになったことがターニングポイントだったと思います。
―攻撃が機能しなくなった原因はどこにあったと思われますか。
渡部:相手のゴールキーパーが、中村匠選手から普段はあまり出ていない宮城風太選手に替わって、セーブ率が53.1%と驚異的な数字でシュートを止められたのが攻めあぐねた一因です。 宮城選手は素晴らしいパフォーマンスでしたが、それ以前に、確率の高いところでシュートを打てていない、相手のディフェンスを突破してシュートを打てていなかったというのも問題でした。僕がライトバック、櫻井がライトウィングという形で一緒に出ることが多いんですけど、サイドシュートを打つシチュエーションを作れなかったのが個人的な反省点です。
―攻撃の停滞をどのようにコート上で解決しようとしたのですか。
渡部:コート上はそれほどネガティブな雰囲気ではなく、準備してきた作戦があるので、それを実行しようとしていました。でも「あれをやってみよう」「次はこれをやってみよう」といろいろと試してみたのですが、ことごとくうまくいかない悪循環に陥っていました。それでもディフェンスとゴールキーパー 陣の踏ん張りで接戦に持ち込むことができました。
髙野:オフェンスがうまくいかない状況でディフェンスまで崩れたら完全に流れを持って行かれてしまうので、ぎりぎり耐えていたという感じです。
豊田合成のオフェンスは比較的狙いが分かりやすかったんですよね。シュート力のあるバラスケス選手が最終的に打つことが多い。相手の最大の強みを、前半から櫻井(睦哉)や山田信也さんが身体を張って止めてくれていて、かなりストレスを掛けられていました。おそらくバラスケス選手はやりにくかったと思うし、後半彼を下げたのはそういうことだと思います。
ただ今回の決勝に関しては、スピードのある日本人選手にかき回されて、そこを止められずにレッドカードをもらってしまいました。次に対戦する時には、その部分をしっかり対策すれば、もっと違う展開に持っていけるんじゃないかと感じています。
準決勝のジークスター東京戦は「チームとしてゾーンに入っていた」
―みなさんのお話を聞くと、昨シーズンの「1点差」よりも手応えを感じる「1点差」だったということですね。今大会のベストシーンを挙げるとしたら、どの場面が思い浮かびますか。
渡部:シーンではないのですが、準決勝の前半で(髙野)颯太が膝を怪我して、後半も出られないくらいの大きな怪我だったんですけど、翌日に決勝を控えた時間がない中で、出場できるようにケアしてくれたスタッフ、その状態でも試合に出場して活躍した颯太の心意気や決勝にかける気持ちの強さがとても頼もしかったです。その心意気に報いるような結果を出せるよう、僕も活躍したいと思いました。
髙野:もっといい状態で決勝に臨めていたらと、すごく悔しいですね。準決勝の前半で怪我をして、後半はもしかしたら出られるかもしれないとハーフタイムに動いてみたのですけど、全く動けなくて。「僕は何をしているんだろう」と悔しくて泣いてしまいました。でも「仲間を信じるしかない」と後半が始まった時に切り替えて、ベンチからすごく声を出しました。みんながそれに応えて勝ってくれて、本当に感動しましたし、チームスポーツっていいなとあらためて思いました。
その時点は決勝に出られるかどうかわからなかったのですが、「何がなんでも出たい」とメディカルスタッフに直訴して。決勝当日も「少しでも出て、チームの助けになれるんだったら」と痛み止めを結構飲んで出たのですが、まさかあんなに長く出場する とは想定外でしたね(笑)。アドレナリンが出ていたので案外動けたのですが、結局はレッドカードをもらってしまって、不完全燃焼な終わり方になってしまいました。
渡部:準決勝は、颯太の怪我に加えて、同じポジションの岡元(竜生)が前半に退場になってしまって。ベンチ入りした16人中2人が出られない状況で、藤本さんがポストをしたり、アイク(富永聖也)がディフェンスで複数ポジションで身体を張ったり、本来のポジションじゃないところをこなしてくれた選手たちがいました。あの試合は、僕がブレイヴキングスに入ってからの10年間で一番の総力戦でしたね。本当にチームスポーツの醍醐味というか、チームワークや総合力が発揮された試合でした。
櫻井:準決勝の相手、ジークスター東京とは、11月30日リーグ戦ではフルメンバーで対戦して27-27の引き分けだったので、前半で2人欠けた時にはすごくプレッシャーを感じましたし、かなり厳しい状況になったと思いました。
渡部:あの時はみんな「熱く狂っていた」というか、チームとしてゾーンに入っている感覚でした。
―チーム内大会MVPを選ぶとしたら、どの選手になりますか。
髙野・櫻井:キーパー陣です。
岡本:ディフェンス陣。
渡部:僕はディフェンスだったら颯太か睦哉。颯太もジークスター東京戦であれだけの怪我をしたにもかかわらず、豊田合成戦に頑張って出てくれていたし、睦哉はバラスケス選手をあれだけ思い通りにさせなかったのはすごいと思う。この2人のどちらか、いや、どちらもMVPだと思います。
ゴールキーパー 陣を含めたディフェンスを殿堂入りと考えて、それ以外で挙げるとすると、僕は吉野(樹)かなと思います。苦しい時間に点を取る、さすがエースという活躍でした。僕はその対角のポジションを担っていたんですけど、すごく助けられた時間帯、試合がありました。吉野の負担を減らせるようにもっと頑張らないと、と感じた大会でした。
「優勝しか見ていない」
―2月からリーグH後半戦が始まります。リーグH初代王者になるためには、何が鍵になりそうですか。
渡部:キーパーじゃないですか。うちのキーパー陣は毎試合セーブ率がすごくいいんですけど、出場時間をベンチ入りの2人で半々くらいで分け合っているので、(規定のシュート数に達しないため)リーグのランキングに載らないんですよ。僕としては、すごく止めているのに個人賞がとれなくてかわいそうだなと思っていて。もちろんディフェンスが機能しないと阻止率も上がらないので、日本選手権で見せたアグレッシブなディフェンスを発揮して、キーパーを含めたディフェンス陣でタイトルを総なめにしてほしいです。本人がどう思っているかはわからないですけど……。
岡本:僕は、チームが勝つことだが第一だと思うので、セーブ率の個人タイトルは獲れなくてもいいと思っています。
リーグの前半戦でジークスター東京に引き分けて、豊田合成には敗れているので、前半戦と全日本選手権での悔しさを後半戦にぶつけて、ここから全勝したいです。
髙野:個人的には昨シーズンベストディフェンダー賞を受賞させてもらったので、今シーズンも獲れたらいいなと思っていますけど、ディフェンスが良すぎると、キーパーにボールが飛んでいかないので、ますます阻止率のランキングに入りにくくなる。その点はキーパー陣には申し訳ないところですが、僕はディフェンスを頑張ります。
僕はブレイヴキングスに入ってから、まだプレーオフで優勝したことがないので、今シーズンこそプレーオフの優勝を味わってみたい。万年2位で「シルバーコレクター」と言われてきましたが、これからは「ゴールドコレクター」になりたい。優勝しか見ていないです。
櫻井:僕もディフェンスをもっと頑張ります。ラースHCからは1試合通して常に高いクオリティーを求められているのですが、日本選手権の決勝でも少しクオリティーが下がる場面がありました。優勝するためにはいかにクオリティーの高い時間を増やせるかが鍵になると思うので、常に高いパフォーマンスが維持できるようにエネルギーを注いで、優勝を勝ち取りたいです。
取材・文/山田智子
2025/01/06