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【BACKYARD BRAVEKINGS#2】玉城慶也選手インタビュー

いつもトヨタ車体ブレイヴキングスへご声援いただきありがとうございます。

トヨタ車体ブレイヴキングスのメンバーがとる行動や想いの背景、裏側、バッググラウンドを、ファンの皆さんに深く知っていただけるよう、インタービューやコラムで掘り下げてご紹介していきます。

 

 

今シーズンよりキャプテンに就任した玉城慶也選手。小学校、中学、高校、大学と全てのチームでキャプテンを務め、ラース・ウェルダーヘッドコーチ(以下、ラースHC)からの信頼も厚い玉城選手は、どのようにチームをまとめていこうとしているのか。今季の意気込み、チームへの思いを聞いた。

 

キャプテンらしいキャプテンではなく、楽しみたい派。

 

―今季よりキャプテンを任されました。ラースヘッドコーチ(HC)からキャプテンの指名を受けた時はどのような気持ちでしたか。

 

玉城選手:うれしい気持ちもあり、これからどうしていこうかなと考えました。実は3年目の時に一度キャプテンの打診を受けているのですが、その時はあまり試合に出られていなかったので断りました。今もそこまで出られてはいないのですが、30代になりましたし、HCが変わった中で、しかも外国人コーチからキャプテンに任命されるのは本当に光栄なことだと感じたので引き受けました。

 

―ラースHCにお話を伺った際、「玉城選手は人を繋ぐことに長けていて、コート内で起こっている些細な出来事にも全て目を配ることができます。リーダーとしての資質がとてもある選手ですので、キャプテンを任せました」と玉城選手のリーダーシップを高く評価していました。

 

玉城選手:僕は小学校2年生のときにハンドボールを始めたのですが、小学校、中学、高校、大学とずっとキャプテンをやってきました。でもいわゆるリーダーシップがあると言われるような、引っ張っていくタイプではないんです。あまり目立つことが好きではなくて、こういう取材も苦手です(笑)。どちらかというと、昨シーズンまでキャプテンだった杉岡(尚樹)の方がキャプテンらしいキャプテン。僕は『頑張って引っ張らないと』と気負ってしまうと、楽しめなくなってしまうタイプなんです。
高校3年生の時に、地元沖縄でインターハイがあって、小学校の頃からずっと期待され続けていました。しかもその前年度に優勝していて連覇のプレッシャーも掛かっていました。キャプテンとして期待を集める中でキャプテンとしてチームを引っ張ることがメンタル的に辛くなってしまった経験があるので、それ以降は自分自身が楽しんで、自由にやるようにしています。小さいことから楽しむことしか考えていませんし、キャプテンとして特別なことはしていないです。

 

声かけのタイミングを変えたことが、優勝につながった

 

―自分自身が楽しむ中でも、キャプテンとして心掛けていることはありますか。

 

玉城選手:ラースHCからはしっかりチームをまとめてほしいと言われていますが、このチームはトップ選手が集まっているので、あえて言わなくてもそれぞれがしっかりと行動できる。
ただ、コミュニケーションを多く取れるような環境にする、という部分に関しては、初めての外国籍監督ということもありますので、今年はこれまで以上に重要視しています。特に若い選手が何でも話せる雰囲気が大事だと思うので、ネガティブなことを言わないように心がけています。プレーで合わないところがあった場合も、「なんでそんなプレーをしたんだ」と否定するのではなく、「なぜそのプレーを選択したの?」と考えを聞く方が僕は好きなんです。もちろんチームルールを守っていない時には言わなければいけませんが、センターというポジション柄、各選手の特徴を捉えて、自分がどのように彼らの役に立てるかを考えるのが仕事だと思っているので、そういう考えになるのではないでしょうか。
あとは、両親が二人とも教師で、時々仕事場に一緒に行くことあって、相談される背中を見ていた影響もあるかもしれません。

 

―コミュニケーションを増やすために、例えば選手ミーティングを増やすなど、具体的に変えた点はありますか。

 

玉城選手:練習中に声をかけるようにしています。僕は練習後にまとめてミーティングで話すのではタイミング的に遅いと思っているので、その瞬間瞬間に気づいたことを伝えるにしています。
その成果が出たのが社会人選手権です。大会の2週間くらい前から、気づいた時にすぐに声をかけるようにしていったのですが、それが他の選手にも徐々に浸透して、大会中は選手同士で声を掛け合うシーンが増えていきました。その流れで優勝できたというのもあるのではないかと思っています。
休憩の時や練習後にしゃべることはだれにでもできます。でもプレー中に、覚えている間にどれだけコミュニケーションを取るかが重要。これまではできるのにやっていなかった。非常にもったいなかったと気がつきました。だから今もその部分は意識していますし、これを習慣化していきたいと考えています。

 

悪い時こそ、キャプテンとしての役割が必要

 

―キャプテンとしてチームに加えていきたい“スパイス”はありますか。

 

玉城選手:このチームは一人一人が個性的なスパイスなので、加えるというより、まとめる方が大変ですね。
基本的に僕はポジティブな性格なのですが、その反面、チームとしてのリスクマネジメントは常に考えています。特に社会人選手権で優勝して、リーグも前半戦は全勝している。ネガティブなことはあまり考えたくないですが、今のところ負けた経験がないので、その時にどうなるのか見えていない怖さはあります。負けた時にしっかり切り替えられるチームでないとリーグ戦では厳しい。悪い状況の時こそチームがバラバラにならないように、キャプテンとしての役割を果たす必要が出てくるかもしれません。

 

―このチームでキャプテンをする難しさはどんなところに感じていますか。

 

玉城選手:このチームは、他のチームに行けばスタートで出られるメンバーが揃っています。大学まではずっとスタートで出てきた選手ばかりなので、どう気持ちに折り合いをつけるかは難しい。特に若い時は出たいのに出られないと、気持ちが折れてしまう。試合に出られない選手の気持ちをいかに落とさないかは、チームをまとめる上で難しいところです。
僕は比較的自分を客観視できるタイプで、「今は自分のコンディショニングが悪いから出られないんだな」と自分で冷静に分析できる。出たいけど出られなくて、悩んで、やる気をなくすのは、非常にもったいない時間を過ごしている。技術や体力は高めるのに時間がかかりますが、気持ちなんて一瞬で変わるし、気持ちが変われば結果はおのずと出てくる。2、3年目の選手から個人的に相談されることもあるのですが、ラースHCからも誰かが遅れていくなら引っ張っていけるようなチームづくりをしてほしいとは言われています。

 

―スタートで出られない選手のフォローという意味では、交代を待つ選手に声をかけに行っているのが印象的でした。

 

玉城選手:代表選手も多く、経験がある選手が多いんですけど、それでもどうしても途中から出る選手は変な力が入ってしまう。一声かけることで、気持ちが楽になって、しっかり頭を整理して試合に入れるようにと思っています。
途中出場は、スタートで出るより難しいんです。スタメンの場合は0対0から始まるので、流れにも乗りやすし、悪かったら自分が悪かったと受け止めることもできる。途中で出る選手は何かしら流れを変えることを期待されていて、悪かったら二重にミスをしたような気持ちになってしまう。だけど、そうした難しい状況でも結果を出さないとスタートにはなれない。だから途中出場の選手が結果を出した時には意識的に良い声かけをするようにはしています。

 

全勝でプレーオフへ、目標は3冠!

 

―社会人選手権、リーグとここまで全勝している。好調の要因はどんなところにあると分析していますか。

 

玉城選手:ラースHCは規律と規範を重んじるので、センターがしっかりと指示を出して統一して攻める。そうすることによって意思統一のミスが減ったことが大きいと思います。だから逆速攻を受ける場面が確実に減っていると思います。
また、今年はさらにディフェンスが良くなったと思います。ディフェンスの要でもある高野(颯太)が、より一層体もできてきて、声を出すようになってきた。さらに3枚目の4人、岡元(竜生)、山田(信也)、(菅野)純平さんが引っ張っていってくれる。
うちはキーパーが3人とも良いので、ディフェンスとの連携がうまく合致した時には5割近くとってくれる。だからそこでも大事になってくるのはコミュニケーションですね。
ただ、ラースHCが目指しているところはもっと先にあると思うので、まだまだだと思っています。

 

―あらためて今シーズンの意気込みをお願いします。

 

玉城選手:前半戦を無敗で終えられたことはチームとして自信になっています。ただまだ豊田合成さんとも対戦していませんし、まずは一周目でチームの力を全部出し切りたい。
欲を言えば、全勝してプレーオフに行き、12月には日本選手権もあるので、最終的な目標である3冠を達成するために、しっかりと準備していきたいです。

 

取材・文/山田智子

2023/10/13