FOCUS ON BRAVEKINGS

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【FOCUS ON BRAVEKINGS #9】「今回も、しっかり負けた」2024-25シーズンの振り返りと来シーズンへの決意

リーグH初年度のブレイヴキングス刈谷は、レギュラーシーズン1位でプレーオフに進出。

6月13-15日に行われたプレーオフでは、セミファイナルで大同フェニックス東海に40-31で快勝するも、決勝では宿敵・豊田合成ブルーファルコン名古屋に5年連続で苦杯を喫し、準優勝に終わりました。

 

2024-25シーズン最後の「FOCUS ON BRAVEKINGS」は、プレーオフの直後に藤本純季選手、富永聖也選手、小畠来生選手、北詰明未選手、山田信也選手の座談会を実施。プレーオフ、そして長かった2024-25シーズンを振り返り、来シーズンへの決意を語ってもらいました。

 

 

「今回も、しっかり負けた」

 

―プレーオフを終えて、今の率直な気持ちを聞かせてください。

 

藤本:僕の場合は、今シーズンで引退することもあって、プレーオフの1週間前くらいから『練習するのもあと何回だな』とカウントダウンしていたので、『やっと終わった』という気持ちでした。

優勝できなかったことについては、『またか』と悔しい思いがあります。でも、僕はもうリベンジするチャンスがないので、皆さん頑張ってください。

 

―決勝が終わった後、目に光るものがありました。どのような涙だったのでしょうか。

 

藤本:負けて悔しくて泣いたのではなく、試合が終わった直後は『ああ、終わったなあ』と淡々とした感じでした。でも、ベンチに戻ってから、なぜか突然込み上げてきました。

 

山田:これまでに泣いたことはなかったですか?

 

藤本:なかったね。引退する人を見てもらい泣きすることは少しあったかな。

 

―山田選手も試合後、号泣されていましたね。

 

山田:僕はああいう場面で泣いちゃうんで、決勝で5回負けて5回とも泣いています。ただ、今回は同じポジション(ピヴォット)の(菅野)純平さん、(岡元)竜生さんが引退することもあって。二人は僕が入団してから支えてくれた先輩で、いつも以上に思いが強かったので、ベンチに戻って二人の顔を見たら抑えきれなくなってしまいました。

 

 

―試合については、どのように振り返りますか。

 

山田:試合が終わった瞬間は、「またやっちまったな」と思いましたね。プレーオフの前に会社の方からも「さすがに5回目はないよね」と言われていたし、自分でもレギュラーシーズン1位で、準決勝の大同東海戦の試合内容も自分自身のプレーもよくて、気持ちが乗っていたので、今回は勝てるんじゃないかと思っていました。

試合が始まって、前半はいい流れで、1点差でしたけどリードして終われたので、後半ももう一度同じことをやろうと考えていました。でも、同じことをしても通用しない。相手が対策してきた中で、僕たちがそれを上回ることができませんでした。帰ってきてから、「まただね」と言われましたけど、もう一度頑張るしかないです。

今シーズンは、きついメニューもかなりありましたし、全員が悔いのないくらいに100%以上の力で取り組んできました。来シーズン優勝するためには、今シーズン以上のきつい練習が必要になるので、このオフは身体を休めるのと同時に、覚悟を決める期間になるのかなと思っています。

 

北詰:僕は、何だろう……。悔しい気持ちもあったけど、「今回も、しっかり負けたな」って感じました。まだ自分で試合をちゃんと振り返っていないので、言葉にするのは難しいです。

 

山田:試合はまだ観てないですか?

 

北詰:まだ観てない。

 

藤本:前半は良かったけどね。

 

北詰:前半は良かったけど、だんだん追いつかれて、悪い流れになった時に踏ん張れない。いつもの負けパターンでしたね。だから、踏ん張れる力をつけることが今後の課題だと考えています。

 

 

富永:僕は東京から帰ってきて、一人で試合を全部観ました。試合中は、やるべきことは頭に入っているけれど、体が動かない状態で、明未さんと一緒で「しっかり負けたな」って感じでした。あとは、豊田合成の同期との差を感じましたね。

 

山田:同期、誰?

 

富永:イッチー(市原 宗弥)とか、矢野(世人)とかですね。彼らが真ん中を守っている時に1対1を仕掛けて抜けなかったのが強烈に印象に残っていて、『勝負に負けたな』と思いました。次に対戦する時には逆の立場になれるように、まずは自分の武器を磨くことを目標にしようと今は考えています。

 

山田:来生は初めてのプレーオフ?

 

小畠:そうです。昨シーズンはメンバー外で、今回が初めてのプレーオフだったので、めちゃくちゃ緊張しました。準決勝はシュートを決めることができて良かったんですが、決勝は1秒も出られず、ただベンチで見ているだけで終わってしまいました。

 

山田:もし出ていたら、活躍する自信はあった?

 

小畠:出ていたら、たぶん1、2点は決められたかなと思います。

 

山田:おお、いいねえ。

 

 

宿敵を倒すために必要なこと

 

―豊田合成の壁を越えるためには、何が必要になると思われますか。

 

藤本:セカンドメンバーがキーになると思います。層の厚さというよりは、停滞した時に流れを変えられる選手の手数が豊田合成は多いなと感じました。

 

北詰:そうですね。

 

藤本:スキルや能力の話ではなくて、豊田合成は役割が一人一人違って、自分の仕事をちゃんとしている選手が多いという印象があります。だから、選手が変わると、ガラッと戦い方が変わる。一方で、うちは、個人というよりはチームで攻めるので、選手が替わってあまり流れが変わらないよね。

 

山田:豊田合成はほぼ半分半分くらいの感じでメンバーが変わりますからね。

 

藤本:決勝で途中から出たのは、アイク(富永)と田代、あと退場の間に僕が入ったくらいだったけど、準決勝の大同東海戦はセカンドメンバーの時間帯に加速させられたよね。大同東海戦のように、例えば、来生が入ってきたら、とにかく来生に1対1で攻めさせようとか、アイクが入ったら、アイクに打たせる形をどんどん作ろうとか。途中から出てくるメンバーの役割を増やして流れが変えられる戦い方を、シーズン通してできるようになるとチームとしてさらに一段階強くなると思います。

 

 

 

北詰:ラース(HC)の求めるハンドボールだけでは、やっぱり優勝は難しい。ラースの戦術は浸透してきているからこそ、そこにプラスアルファで選手のオリジナリティや選手同士のコンビネーションが必要になると感じました。

豊田合成とは何回も対戦していて、僕らの戦術もそれほど大きく変わっていない中で、ラースに言われていることだけをやり続けていても届かないと、もうみんなわかっていると思う。

 

藤本:シーズン終盤にラースが「戦術の殻を破っていこう」と取り組みはじめた。それが僕はすごく大事だと思っている。来シーズンは、チームの規律の中で、チャンスがあれば、殻を破って、違うプレーをすることが求められる。

例えば、決勝の立ち上がりの(吉野)樹のシュートも、練習ではやっていないけど、行けると思うから打ちに行っている。システムの続きというか、相手の想像していないプレーを、自分の判断でして、その結果に対して責任を取る選手が増えてくると、相当変わっていくと思います。

 

小畠:ベンチから見ていて思ったのは、後半になってから、豊田合成はパスをどんどん繋いでシュートまで持っていく場面が多かったけど、僕たちは単発でシュートを打って外すということがすごく増えたように感じました。

 

藤本:決勝の時のようにオフェンスが停滞すると、樹や(渡部)仁は自分がどうにかしないという使命感があるからね。さっきのセカンドチームの話にもつながるけど、今は手詰まりになった時に切れるカードが少ない。だからこそ、7人攻撃だったんだと思うんだよね。

 

山田:その通りですね。

 

藤本:だから、来シーズン1年かけてカードを作っていかなければならない。

 

山田:たしか豊田合成は、新人の荒瀬(廉)選手が後半3点を取ったよね。新人が活躍すると、相手は勢いに乗るし、フォーメーションじゃないのに突然打ってきたんですよ。

 

藤本:あれによってディフェンスのラインを崩されたと思うから、すごく影響が大きかった。

だから、僕は来生に来季がんばってもらいたいなあ。終盤、ラースに期待されていたよね。

 

富永:ラースに呼ばれていたよね。

 

小畠:「最近調子いいなあ。頑張れ」って言われました。

 

藤本:今シーズン、アイクはカードとして加えられたよね。ディフェンスでは3枚目、オフェンスでは樹が疲れたらすぐに交代して結果を出すことも多かった。アイクみたいな選手がもっと増えてくるといいと思う。

 

山田:そういう意味では、パウエル(・パチコフスキー)もすごく大きなカードですね。

 

藤本:パウエルが先に出て、仁が途中から入るとか。来シーズンはトリム(・コルペルド・ジョンセン)、アンドレ(・ゴメス)が加わるし、カードが増えることでいろいろな組み合わせができて面白くなると思います。

 

 

ディフェンスが確立され、安定感が増した

 

―2024-25シーズン全体を振り返って、チームとして、個人として成長を感じるのはどんなところでしょうか。

 

富永:前半はこれまでも課題だった波がまだありましたが、後半は安定してきたと思います。前半は悪い流れをずっと止められずに下位チームに逆転されることがありましたが、ずっと点数を取れない、ずっと守れない場面が、少しずつなくなってきました。ちょっとした差ですけど、それが結構大事で。チームとして悪い流れを止められる力が少しずつついてきたと、思いませんか?

 

藤本:これまでは、毎シーズン、どこかで取りこぼすということがあったんですけど、今シーズンはジークスター東京と豊田合成以外、あとは中盤の安芸高田わくながハンドボールクラブ戦くらい。それ以外は負けないだろうなと感じるくらいの安定感がありましたね。

 

山田:確かにそうですね。

 

富永:今シーズンの安定感をより強いものにして、上位チームにも発揮できるようになることが来シーズンは求められるのかなと考えています。

個人的には、いままでは慌ててしまっていたところで冷静にプレーできるようになって、ハンドボールが昨シーズンよりも楽しくなりました。ハンドボールと向き合うための土台が作れたのが一番かなと思っています。

 

藤本:アイクは、試合経験が増えて、その中で結果も残して、自信がついた印象があるよね。

 

山田:豊田合成には一度も勝てませんでしたが、チームとしての地力がつきました。その結果、初めてレギュラーシーズン1位になりましたし、チームとしての成長を感じています。

特にキーパーを含めたディフェンスが良かったと思います。福井永平寺ブルーサンダー戦は前半4失点に抑えることができました。下位チームに対しても4点に抑えるのはなかなか難しいことなのですが、ハマればそういうこともできます。

個人的には、ラースから1対1のタイミングについてずっと言われてきたので、今シーズンは1対1を目標に練習してきました。練習で小畠くんを相手に思いっきりディフェンスしてきたおかげで、1対1のディフェンスで相手を捕まえるタイミングをつかめたという手応えがあります。

 

藤本:ディフェンスは確立されてきたと思うよ。6-0は特にシステムがあるわけではないけど、自分たちでいろいろなことをコントロールしてプレーできる人が増えた。

 

山田:システムがあるわけではないから、崩しづらいんじゃないかと思うんです。実際に豊田合成にも、大きく崩されたとは思っていないんですよ。プレーオフの決勝でも、特に前半は相手のやることが全部わかるくらいの感じでした。オフェンスのミスから失点したり、自分たちがいつもと違うことをして崩される場面はありましたけど、基本的なディフェンスをしている時間は大きく崩されることはなかったという印象です。

 

藤本:先発メンバーができているディフェンスを、選手が変わっても同じクオリティでできるようになると、本当に崩されなくなるよね。

 

 

チーム内MVPは?

 

―今シーズンのチーム内MVPを選ぶとすると、誰になると思いますか。

 

藤本:僕は(加藤)芳規かな。

 

北詰:僕も芳規さんだと思います。

 

山田:確かに芳規さんかもしれない。後半のプレーオフに向けてチームとして士気を上げていく大事な時期に、確率よく止めてくれて、気持ちを乗らせてくれた印象があります。

 

富永:優勝していたら、芳規さんが最高殊勲選手賞だったと思う。

 

藤本:あとは山田。プレータイムがめちゃくちゃ長かったよね。

 

山田:そうですね。シーズン後半の試合は 40~50分は出ていました。

 

藤本:あのポジションで40分間続けるのはすごいよね。オフェンスではポストの位置で身体をはって、ディフェンスでも真ん中を崩されちゃうと全体が崩れちゃうから。山田は頑張ったんじゃないかなって思います。

 

山田:田代が途中で入ってきてくれて助かりました。田代は今シーズン、終始緊張していましたけど(笑)。

 

藤本:来シーズンはもっとチームに馴染むと思うから、そうなるとチーム層に厚みが出てくるよね。

 

富永:僕は、よっぴー(加藤)か(吉野)樹さんだな。

 

山田:樹さんってアベレージが高いから、あまり目立たないんですよね。あの成績の選手が急に現れたら、普通はベストセブンに選ばれると思う。

 

藤本:今シーズンは得点も取っている(リーグ3位)し、確率もいい(リーグ2位)んだけど、それが普通になっちゃっているから、個人賞に選ばれないんだろうね。

 

山田:だから、僕はディフェンスだと芳規さんで、オフェンスだと樹さんかな。

 

富永:杉さん(杉岡)もシュートを外さないよね。

 

藤本:9割はすごすぎるよね。

 

北詰:歴代最高シュート率でしょ。

 

富永:サイドの角度のない中で、打ったらほぼ入るのはこわいですよ。

 

「来シーズンは豊田合成からすべてを奪い取る」

 

―来シーズン、キーマンになりそうな選手は?

 

山田:僕は富永くんだと思います。日々地道に頑張っている姿を見ているので、そろそろ爆発するんじゃないかと期待しています。今シーズンもチームが苦しい時に気持ちいいシュートを1本決めてくれたり、ノータイムフリースロー決めたりしてチームを盛り上げてくれたし、ディフェンスでも真ん中や2枚目を守ってチームに貢献してくれているので、来シーズンはきっとそれ以上のプレーをしてくれるはず。チームにとってはキーマンだと思いますし、彼にとっては勝負の年になるんじゃないかと思います。

 

 

小畠:僕は信也さんですね。いつもチームを鼓舞してくれるし、扇の要としてチームを縁の下で支える存在だと思うので。

 

北詰:僕は松下くんに頑張ってほしいです。同じポジションですし、先輩の(玉城)慶也さんが引退してしまったので、その分、彼に頑張ってほしい。

藤本:僕は来生。さっきも話したけど、セカンドチームが充実しているチームが真に強いチームだと思うので、アイクと一緒にセカンドを引っ張っていけるくらいの存在になってほしい。来生は運動能力がめちゃくちゃ高くて、練習では一般の皆さんが知らないようなシュートを打っているんですよ。

 

山田:試合では一回も見たことないけどね(笑)。

 

藤本:来生くらい身長が高くて(188cm)、フェイントをするプレーヤーが他にはいないし、山田をあんなに抜ける選手は見たことがない。爆発的に変わるとしたら、アイクや来生だと思う。

 

山田:確かに、僕とか明未さんがここからバーンと垂直に伸びる可能性はそれほど大きくはないと思うけど、アイクや来生にはその可能性があるよね。

 

藤本:あとは田代。(櫻井)睦哉とかはディフェンスも頑張っているし、出場時間も長いので、ある程度見えてきているから、アイク、来生、田代、松下の成長が来シーズンのプレーオフの結果を決めるんじゃないかと僕は期待しています。若い選手がどんどんナショナルチームに行って経験を積んでくると、さらに強くなると思うし、順当に行けばかなりの選手が日本代表に選ばれる可能性があるとも思っています。

 

 

―最後に1シーズン一緒に戦ってくださったファンの方へのメッセージをお願いします。

 

小畠:ファンの皆さまの応援があったからこそ、苦しい試合も勝つことができました。試合が終わった後に、「お疲れ様」と声をかけていただいたことが励みになり、また頑張ろうと力になっています。感謝しています。

 

山田:1年間ありがとうございました。僕たちのホームゲームは、刈谷市体育館は1000人以上、最後のウィングアリーナ刈谷は2000人を超える多くのファンの皆さんに来ていただいて、ホームゲームじゃなきゃ味わえない雰囲気をファンの皆さまや運営に関わる皆さまに作っていただき、気持ちよくプレーができるのは幸せなことだと感じています。それに対して恩返しができるのは優勝すること。もう5年も待たせてしまっているので、来シーズンこそは、優勝して嬉し泣きをしている姿を見せたい。もう1年我慢して、会場に来て応援してくださるとうれしいです。

 

富永:シーズンを通して、熱い応援をありがとうございました。ブレイヴキングス刈谷のファンは熱い方が多いので、僕らもその熱量に負けないように頑張っていきたいと思っています。来シーズンは、豊田合成から全てを奪い取りたい。それしか考えていないので、引き続き熱い応援よろしくお願いします。

 

北詰:1年間ありがとうございました。今年のホームゲームはこれまで以上に熱気がすごくて、そういう雰囲気の中で試合ができるのは幸せなことだなとあらためて感じたシーズンでした。今シーズンに懸けていたので、優勝できなかったのは残念でしたけど、僕たちにはまだもう一度頑張れる力があると思っています。また来シーズン、頼もしい後輩たちと一緒に頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。

 

藤本:今シーズン、そして14年間、このチームでプレーできたことを本当に感謝しています。最初の頃は社員の方が多かったのですが、最近はユニフォームを着てタオルを掲げてくださるファンが増えてきて、素晴らしい雰囲気の中でプレーできることが本当に楽しかったです。ブレイヴキングス刈谷はもっともっとファンを増やすことのできる魅力あるチームだと思っています。3000人くらいのファンが来てくれれば、選手ももっと頑張れるはずなので、さらにたくさんの方に会場に来ていただければと思っています。来年こそは優勝してくれると信じています。

 

2024-25シーズンは終了しましたが、ブレイヴキングス刈谷の道はまだまだ続きます。

今後どんな物語が紡がれるのか、引き続きブレイヴキングス刈谷にご注目いただければと思います。

2025/06/30